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2024.04.26 Fri 「 [PR]
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2009.03.26 Thu 「 某様宛草稿一つの話
ミツバチ三つ子が何やらごちゃごちゃやっています。
ちゃかちゃか一発書きしておりますのでお見苦しい所多々ありますがお許し下さい…!><


*****


「トルクぅ!トルク助けてぇっ」

悲痛とでも言うべき叫び声が路地裏に響き、ソファーから立ち上がったばかりの依頼人が怪訝な顔で振り返った。

——またか。
内心眉をひそめつつも、表向きにこやかなまま何事も無いかのように依頼人を路地の出口まで見送り、依頼人が通りの向こうへ消えたのを確認して、トルクは路地の奥へと冷たい視線を送った。

「兄さん。商談中に僕の店に入らないでくださいとお願いしてるでしょう」

先ほどまでと打って変わって射るようなその目に、申し訳無さそうに頭を垂れながら彼の兄――軸がひょこりと「店」に現れ、
それがこの一件の始まりとなった。



「証拠を掴まれた、ですって?」

実にとんでもないミスをしてくれた物である。
兄は調子に乗ると必ずしくじるタイプで、常々注意はしてきたが、まさかここまで酷いドジを踏むとは思ってもみなかった。

「うん、そのね、軸が敵の結構偉い人刺すのに使ったナイフ、おっことしたのを拾われちゃった」

じるじるとハチミツジュースを吸い上げながら、甘さににやつきそうになる口元を必死で引き締めている兄は、それでも当事者の自覚があるのだろうか。
先ほど泣きじゃくりながら助けを求めてやってきた人間とはとても思えない能天気さだ。

「一ヶ月後までにいっぱいお金くれなきゃ軍に言うぞ!って怖い顔するのー」

こんなの!と言いながら目尻を指で吊り上げる兄の言葉はほのぼのと響くが内容は相当緊迫している。
軍に証拠品を持って行かれれば間違いなく兄は組織をクビになり、その上勾留、裁判、刑務所行きだ。

「…それじゃ、回リが拾った人を爆発させれば良いのね。そうなのね」

軸の横で無言でハチミツジュースをじるじると吸い上げていた回リが急に顔を上げ、無表情に首を傾げる。
確かにそう、いつも通りその拾い主を消してしまえば良いだけの話だ。
兄のヘマは弟妹が取り返す、というのが自分たち三人のやり方なのだから。

が、兄は首を横に振る。

「だめ。自分が死んだらナイフが勝手に軍のとこに行くぞって言われた」

血まみれナイフに足は無い。
おつむの足らない兄の言葉を解読した所、
拾い主が死んだら軍に証拠を届ける手はずが整っている、ということらしい。

金を出さねば証拠が出る。主を叩けば証拠が出る。
そのくせ、ここでおとなしく金を渡せば一生たかられるに決まっている。

「…困りましたね」

「そうなの、困ったんだー。それでトルクなら頭良いから助けてくれると思って来た!」

兄は自分を魔法使いか何かと勘違いしているらしい。
確かに魔術の才に恵まれた者の多いこの国に生まれたが、残念ながら我々には魔術の魔の字も宿っていないことを忘れたのだろうか。

が、どうにかしない訳にもいかない。
この状況を打開する方法はたったひとつ、証拠品を破壊することだ。
が、この拾い主は恐らくそれを見越して目を光らせ何かしらの手だては打っているはず。
我々が三つ子だということくらい顔を見ればすぐにわかってしまうし、自分たちだけで取り返すのは難しい。

――ならば。
その道に特化した人間に頼めば良い。
この間、スラバヤの方からやってきた客が零した若手情報屋の噂がちょうど気になっていた所だ。
なんでも最近現れた正体不明の情報屋で、隠蔽工作を得意としているとかいう話だった。
その仕事ぶりのデータを取るのも兼ねて、仕事を依頼するとしよう。
だが彼女はスラバヤ人でリヴリーだ。
モンスターの依頼は引き受けてくれない可能性もある。
誰かしら、モンスターを差別しない仲介者が必要だ。

そこまで頭の中で巡らせた所で、回リがハチミツジュースを手渡してきた。

「お兄ちゃん、…軸お兄ちゃん、助けられるのよね?」

「ええ、大丈夫です。心配はいりませんよ、回リ」

まだ大丈夫と決まった訳ではないのだが、妹を不安がらせるのは良くない。
脚色を加えて答え、ジュースを吸い上げていると、彼女は小さく、良かった、と呟き言葉を継ぐ。

「…それじゃ、回リもお兄ちゃんにお願い聞いてもらっても、いいのかしら」

回リがお願いなどと珍しい。
滅多にないことだがそれだけに聞いてやりたい物だ。一も二もなく首を縦に振る。

「良いですよ。何です?」

「最近ね、爆弾売ってるとすぐ軍人か騎士が来て、怖いの。…ちょっとね、ファミーラの中に売るのやめて、外に売るのはどうかしら」

回リは兄と違って利口な娘だ。
なるほど、と相槌を打ち、また頭を回転させ始める。

つまるところ、爆弾を売りさばける相手先、そして噂の情報屋を、同時に仲介してくれる人間、その依頼をすぐに、そして確実に受けてくれるような人間が理想だ。

その条件下で、データベースから該当者として上がったのは、一人。

「それでは早速、動きましょうか。あまり猶予もありませんし」

「え、え、なになに、トルクもう作戦つくったの!?」

目をキラキラさせる兄と、

「お兄ちゃん、…良いの?」

首をかくりと傾げる妹に、

「ええ。全部一気に片付ける方法を思いつきました」

トルクはこくりと頷いてみせた。
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